福岡地方裁判所 昭和53年(わ)728号 判決 1979年3月30日
本店所在地
福岡市博多区東比恵三丁目一九 二七号
(代表者 - 同市中央区赤坂三丁目四番六号)
株式会社中陽商会
右代表者
豊田敏夫
本店所在地
福岡県久留米市南町四六三番地の二
(代表者 - 福岡市中央区赤坂三丁目四番六号)
久留米中陽株式会社
右代表者
豊田敏夫
本籍
山口県萩市大字江向四七五番地
住居
福岡市中央区大濠一丁目五番一九号ハイツ大濠二〇三号
会社役員
豊田文子
明治四三年五月二九日生
本籍
福岡市同区大字下警固三六五番地
住居
同市博多区祇園町一番二六号
会社役員
寺島健二郎
大正一一年九月八日生
昭和五三年(わ)七二八号法人税法違反被告事件
検察官小林敬出席
主文
被告人株式会社中陽商会を罰金一八、〇〇〇、〇〇〇円に、
被告人久留米中陽株式会社を罰金五、〇〇〇、〇〇〇円に、
被告人豊田文子を懲役一年二月に、被告人寺島健二郎を懲役八月に各処する。
この裁判確定の日から三年間右両懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社中陽商会は、福岡市博多区東比恵三丁目一九番二七号に本店を置き、菓子食品卸売を営業目的とする資本金三〇、〇〇〇、〇〇〇円の株式会社、被告人久留米中陽株式会社は、福岡県久留米市南町四六三番地の二に本店を置き、菓子食品卸売を営業目的とする資本金一〇、〇〇〇、〇〇〇円の株式会社、被告人豊田文子は、両被告人会社の代表取締役としてその業務全般を掌理していたもの、被告人寺島は、被告人株式会社中陽商会の専務取締役及び被告人久留米中陽株式会社の取締役として被告人豊田文子を補佐してその業務全般を統括していたものであるが、法人税を免れようと企て、
第一被告人株式会社中陽商会の業務に関し、
一 被告人豊田文子及び同寺島は、共謀の上、昭和四九年七月一日から同五〇年六月三〇日までの事業年度における同被告人会社の実際の所得金額が一五三、〇〇五、一四四円であったにもかかわらず、架空仕入を計上して簿外預金を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、同年九月一日、福岡市東区馬出一丁目八番一号所在の博多税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一〇〇、一〇六、六七六円であり、これに対する法人税額が三五、三八七、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告人会社の前記事業年度における正当な法人税額五六、五三五、〇〇〇円との差額二一、一四七、八〇〇円を免れ、
二 被告人豊田文子は、
1 昭和五〇年七月一日から同五一年六月三〇日までの事業年度における同被告人会社の実際の所得金額が一五九、四三四、九六四円であつたにもかかわらず、前同様の不正な方法により所得を秘匿した上、同年八月三一日、前記博多税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一七、二二七、五〇一円でありこれに対する法人税額が四二、二二七、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告人会社の前記事業年度における正当な法人税額五九、一〇九、六〇〇円との差額一六、八八一、九〇〇円を免れ、
2 昭和五一年七月一日から同五二年六月三〇日までの事業年度における同被告人会社の実際の所得金額が一八七、一七三、六八一円であったにもかかわらず、前同様の不正な方法により所得を秘匿した上、同年八月三一日、前記博多税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二六、二八五、五九二円であり、これに対する法人税額が四六、一九六、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告人会社の前記事業年度における正当な法人税額七〇、五四七、五〇〇円との差額二四、三五〇、九〇〇円を免れ、
第二被告人久留米中陽株式会社の業務に関し、
一 被告人豊田文子及び同寺島は、共謀の上、昭和四九年七月一日から同五〇年六月三〇日までの事業年度における同被告人会社の実際の所得金額が五三、九三五、二〇四円であったにもかかわらず、架空仕入を計上して簿外預金を設定するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、同年九月一日、福岡県久留米市諏訪野町四丁目二、四〇一番地所在の久留米税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二二、五四三、〇五八円であり、これに対する法人税額が七、五一〇、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告人会社の前記事業年度における正当な法人税額二〇、〇二三、五〇〇円との差額一二、五一三、四〇〇円を免れ、
二 被告人豊田文子は、昭和五〇年七月一日から同五一年六月三〇日までの事業年度における同被告人会社の実際の所得金額が三八、八五〇、九七一円であつたにもかかわらず、前同様の不正な方法により所得を秘匿した上、同年八月二八日、前記久留米税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五、五七六、七三一円であり、これに対する法人税額が九、〇八三、七〇〇円である旨の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同被告人会社の前記事業年度における正当な法人税額一四、三八五、九〇〇円との差額五、三〇二、二〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の種目)
判示全事実につき被告人両会社代表者と被告人豊田文子の当公判廷における各供述のほか一回公判調書中検察官証拠等関係カード記載番号4、50、94、95、96、98、100、101の各標目と同一であり、判示第一の一、二1、2事実につき右カード記載番号1、5、8、14、16、51ないし56、60ないし80、102 の各標目と同一であり、判示第一の一、第二の一事実につき被告人寺島健二郎の当公判廷における供述のほか同カード記載番号87、8991、92、93の各標目と同一であり、判示第一の一事実につき同カード記載番号90、107の各標目と同一であり、判示第一の二の1事実につき同カード記載番号108の標目と同一であり、判示第一の二の2事実につき同カード記載番号110の標目と同一であり、判示第二の一、二事実につき同カード記載番号2、3、28ないし33、35、5758、59、81、82、84、103の各標目と同一であり、判示第二の一事実につき同カード記載番号105の標目と同一であり、判示第二の二事実につき同カード記載番号99、106の各標目と同一であるから、それぞれの同一部分を引用する。
なお弁護人において、価格変動準備金の損金計上を一特典とする青色申告の承認取消により被告人両会社の価格変動準備金が益金加算されているが、架空仕入などによる益金圧縮を主たる理由とする右承認取消の以前に申告計上された価格変動準備金につき被告人両会社代表者らの脱税故意を認定することはできない旨主張するところ、国税査察官作成の脱税額計算書、同説明資料二冊によると右主張のような承認取消による益金加算が認められるが、被告人豊田文子と被告人寺島健二郎の検察官に対する昭和五三年八月九日付各供述調書により認められる「被告人両会社の代表者などである右被告人両名は、ともに、税金申告にあたって本件のような架空仕入など不正をすれば青色申告による特典が認められなくなることは常識として知っていた。」ことから前記主張による被告人両名の故意が推認されるのであり、したがって右主張は採用しない。
(法令の適用)
被告人豊田文子、同寺島健二郎の判示第一の一、第二の一の各所為はそれぞれ刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当し、被告人豊田文子の判示第一の二1、2、第二の二の各所為はそれぞれ同法条項に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人株式会社中陽商会に対し判示第一の一、二1、2の各罪につきそれぞれ同法一六四条一項により同法一五九条二項所定の罰金刑を科し、被告人久留米中陽株式会社に対し判示第二の一、二の各罪につきそれぞれ同法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑を科し、判示第一の一、二1、2の各罪と判示第二の一、二の各罪はそれぞれ刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪所定罰金の合算額範囲内で、被告人株式会社中陽商会を罰金一八、〇〇〇、〇〇〇円に、被告人久留米中陽株式会社を罰金五、〇〇〇、〇〇〇円に各処し、被告人豊田文子に対し判示第一の一、二1、2、第二の一、二の各罪、被告人寺島健二郎に対し判示第一の一、第二の一の各罪はそれぞれ同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により、被告人豊田文子につき最も重い判示第一の二1の罪の刑に、被告人寺島健二郎につき判示第一の一の罪の刑にそれぞれ法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人豊田文子を懲役一年二月に、被告人寺島健二郎を懲役八月に各処し、情状により同法二五条一項を適用しこの裁判の確定した日から三年間右両懲役刑の執行を猶予する。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 田尻惟敏)